15の未来予想から考える 今後の発展に期待したい神奈川県内の注目エリア

「事業の拠点を移動したら、経営状況に意外なほど影響した。」・・・なんて話を耳にすることがあります。実際に拠点を取り巻く環境や人の流れは、集客に影響しますし、家賃やテナント条件は、コストに直結しますので、拠点選びに悩まされる方も少なくないと思います。
「可能であれば、拠点は画期のある魅力的な街であって欲しい。もちろん仕事の話だけでなく、暮らすエリアも安全で将来が楽しみな場所を選びたい。」私もそう考えます。
そこで、今回は神奈川県内で将来的に発展が期待される「注目のエリア」を4つ選出し、そのポイントをまとめました。
もちろん将来の話しですので予想の域を出ませんが、ただ当てずっぽうに語るつもりもありません。その信頼性を少しでも高めるために、公的機関やそれに準ずる信頼のある企業・団体が出した15点の資料を抜粋し参照しています。各資料で共通することの多いポイントに注目のうえ報告していきますので、さっそく確認してみましょう。
相模原駅・橋本駅エリア —— 計画的に便利を育てる街
橋本周辺と言えば、リニア駅の設置により活気づいている印象ですが、これは偶然ではなく「便利さを意識して設計している街」それが橋本の面白さです。
県は県央の結節強化を掲げており、市は駅前の区画整理やアクセス道路など計画的に都市開発を固めています。相模原・橋本エリアを “広域につなぐ×駅前へ集める” を両立することで、街を段階的に動かすという計画が進行しています。
“ここ”が注目ポイント
行政が「交通整備の強化」を明言
県の総合計画では、国道16号と国道129号の機能強化、圏央道との結節、リニア駅設置を踏まえた交通整備など、複数の方針を発表しています。
方針がハッキリすると駅前施設の開発も期待されます。また、生活者は勤務や観光での “乗り継ぎやすさ” を日常で実感しやすく、住みやすい街の実現に繋がります。
生活のあらゆる需要が揃う駅前開発
市は、各駅前の土地区画整理と都市計画を決定し、官民のガイドラインで方向を定めています。駅の周りには、オフィス・商業施設・宿泊・住宅が “歩ける距離” に重なる見通しです。一方で外縁は、国道や圏央道にスッと乗れる“幹”が通るため、物流や近隣住民のアクセスもスムーズになり、外部からの利用も期待されています。
川崎駅・臨海部エリア —— 三位一体で進化する街
このエリアは、製造・物流・研究開発が同じ土俵で回り、街の経済を回していることはご存知かもしれません。それに拍車をかけるように、港湾と広域道路、公共交通の骨格強化まで設計が進んでいます。この「重なり方」が川崎・臨海エリアの面白さです。
“ここ”が注目ポイント
“港×幹線×公共交通”の交通網強化が具体的
川崎市では、港湾アクセス・臨港道路・広域幹線の機能強化に加え、基幹バス(BRT等)まで含めた開発が計画文書上で整理されています。これは、臨海部の交通機関の循環を強め、外部へのアクセスや空港方面への直結を明快にする設計です。これら移動時間の短縮は、通勤や出張、搬出入の手間が減るため、賃料・地代に直結すると考えられます。
港湾倉庫の進化の広がり
港湾・倉庫・コンビナート系では、使い勝手のよい新型への置き換え傾向があります。
こうした融通は、細かいようですが、借り手の幅が広がり、賃料の基準が上がりやすくなります。ポイントとしてこうした更新は、一部の区画だけでなくエリア一帯で連動して進みやすいことです。
研究開発×臨海実装の近さ
殿町にあるキングスカイフロントを筆頭とする研究開発の集積は、港湾の物流や製造の拠点と隣り合うことで真価を発揮します。研究・実証から量産までを短距離でつなげやすく、研究で終わらない「実装への期待」が投資の意欲に直結します。
磯子区・洋光台駅エリア —— 街を更新、暮らしも一新
洋光台は、1970年代に開発された古い団地という特色がありますが、近年になって県の住生活計画で重点供給地域として位置づけられ、公的住宅の建て替えに民間誘導を重ねる地域一帯のリニューアル計画が進んでいます。古い団地や公共住宅を建て替えつつ、商業施設や公園など、街区単位で再設計が進む見通しです。施設単位ではなく、街単位での開発が生活の質と資産の基準線を同時に底上げしやすい理由です。
“ここ”が注目ポイント
制度で道筋が見える「更新の設計」
洋光台周辺は、県による公的な住宅建て替え計画と、民間開発の誘導という2方向からの計画が、具体的に整理されるところまで進んでいます。つまり「やる・やらない」の検討段階ではなく、将来の開発が明確化している段階です。行政の後押しは民間開発の実行力に直結するため、計画の実現性も高いところが魅力です。
老朽団地群という「スケールの余白」
このエリアでは、かつての土地開発で建設された公営の大規模団地が連続しているため、街区ごとの建て替えを開発するのに十分なボリュームの土地が確保できます。そのため建築物だけでなく、歩車分離の通路や広場・緑地なども同時に設計し直せるのが強みです。
ファミリー実需に素直に効く「暮らしの設計」
更新のターゲットとしてファミリー向けの住環境が意識されており、通勤・通学・買い物の移動手段や商業施設の充実など、生活の利便性が想定されています。さらには段差の少ない歩道、遊び場や教育環境の組み込みなど、育児や高齢者にも配慮された計画が進められています。
小田原駅周辺エリア —— あらゆる需要に対応出来る県西の玄関口
小田原といえば、箱根まで続く観光エリアの玄関口として有名ですが、現在、日常の通勤・通学も加味した駅周辺の再編設計が計画されています。長距離移動は新幹線、日常的な移動は在来線、観光は箱根方面と小田原駅だけで3方向の需要に対応できることが売りです。
“ここ”が注目ポイント
県西のハブとして交通関連が整備される
小田原駅周辺は、県の地域構造でも県西のハブとして扱われ、観光のさらなる来訪需要の拡大を、駅前の整備を進めて受け止める方針です。コンパクトな設計ではあるものの、単発的な施策ではなく “都市の器づくり” となる計画のため、不動産の上振れに作用し得ます。
駅前の更新事例が続き 開発意欲を感じさせる
駅前には、更新余地のある公共・商業・業務系の施設が点在し、動線や街区の組み替えにも対応しやすくなっています。また、2020年にオープンしたミナカ小田原をはじめ、小田原駅周辺に増加する商業施設も来訪客の回遊性と滞在を促進しています。
いかがだったでしょうか。われらが神奈川県、ここで登場したエリア以外もどんどん盛り上げて、経営にも反映させていきたいですね。
最後に今回参照した資料を紹介します。いずれも神奈川県の将来を考えるうえで興味深い資料ですので、気になった方はぜひ確認してみてください。
参照一覧
Ⅰ. 交通機関計画・インフラ
『神奈川県広域道路交通計画』
『神奈川県内の地域分析から公共交通のあり方を考える』
『かながわ交通計画(令和4年3月改定・PDF)』
『川崎:臨海部の交通機能強化に向けた実施方針(中間とりまとめ、2025/2)』
Ⅱ. 都市開発・まちづくり・スマートシティ
『神奈川県 第3期 SDGs 未来都市計画(2024~2026)』
『かながわを取り巻く都市づくりの課題』
『かながわ都市マスタープラン』
Ⅲ. 住宅政策・市場予測
『神奈川県 住生活基本計画(解説ページ)』
『かながわの住宅計画の体系図(2024–2033)』
『神奈川県内の不動産市況 現状と今後の展望』(横浜市立大学等)
Ⅳ. 経済・産業・地域金融
『2025年度・2026年度の神奈川県内経済見通し』
『法人企業景気予測調査結果(令和7年4月~6月期)』
Ⅴ. 総合行政・将来ビジョン・地域計画
『かながわグランドデザイン』
『8市の未来予測等に関する報告書(横浜市)』
『新たな総合計画「基本構想」』
記事の監修
弁護士_藤江勇佑氏-300x300.jpg)
藤江 勇佑(ふじえ ゆうすけ)
弁護士
「まちづくり」に詳しい専門家


